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福澤諭吉『民間経済録』第三章 倹約の事 四段落目

福澤諭吉(1877)『民間経済録』
近代デジタルライブラリー - 民間経済録. [初編]

第三章 倹約の事 四段落目。
原文は片仮名・スペースなしのところを平仮名・スペースありに変更した。

現代語訳はこちら




右の如く質素倹約 細々積て身代を作り其身代を何事に用るやと尋るに 第一 衣食を十分にして家内安楽ならんが為なり 第二 子弟の教育に金を愛まずして二代目の人物を作らんが為なり 第三 他人に依頼せずして世の侮を防ぎ我が思ふまゝの事を行はんが為なり 今世上の有様を見るに貧乏の為に親子兄弟共に一家に居ること能はざる者あり 甚だしきは愛をしき子を捨てゝ他人の手に渡し 睦しき夫婦相分れて別々に稼ぐ者あり 或は仮令ひ子を捨て妻を去る程の貧に至らざるも銭なきが為に子の教育を十分にすること能はざる者は天下十に七八なり 堪へ難きことならずや 又今の世界の人情として身代なき者は唯其身に不自由するのみに非ず家の貧しきが為に謂れなくして他人の侮を受ること甚だ多し こは必竟これを侮る者の不徳にして侮を受る者の身に於ては毫も取るに足らずといえども 滔々たる天下の勢 銭を貴ぶ世の中に住居すれば此勢には敵す可らず 銭の敵を防ぐには銭を以てせざるを得ず 斯る浅ましき世の中なれば 有徳有智の人物にても遂には銭の為に志を屈して我が思うことを言行に顕はすを得ず 生涯奴隷の境界に沈て朽果る者甚だ多し 世に民権論の行はれざるも其原因多くは論者の貧乏に在り